成長期の子どもにとって、体力と脳の発達は密接に関与し合うことが、以前からわかっており、運動神経だけではなく、学力面にも影響がおよぶと考えられています。
しかし統計だけで、科学的なエビデンスは今まで発表されていませんでしたが、世界ではじめて、スペインのグラナダ大学が、体力のある子どもの脳は、灰白質面積が広いことを発見しました。
「体力が高い」はどの程度?
「体力が高い」と言われても、どれぐらいの運動力のことなのか、わかりにくいですが、一般に、有酸素能力と運動能力をあわせもつことです。 目安としては、体育の授業で、先生に言われた内容を、最後までやりこなせる子どもです。 クラスの中には数人、体力面で、途中で持久力が続かずに、やめてしまう子もいますが、そういう子どもは「体力が高い」とは言えません。 たまたまその当日だけ体調がよくない場合は除外されますが、常にギブアップしてしまう子どもは、有酸素能力が低いと言えるでしょう。
体力の高さと脳の関係とは?
グラナダ大学の研究では、有酸素能力が高い子どもほど、脳の灰白質量が大きいことがわかってきました。
具体的には、脳の前頭部運動前野と補充運動皮質、そして学習能力と記憶の貯蔵庫とも呼ばれる「海馬」と「尾状核」が存在する皮質下領域、側頭部(下側頭回と海馬傍回)において、灰白質量が高かったようです。
この辺りの脳の領域は、全て、実行力の他に学習や運動、視覚の進展に重要な部分なのです。 ※参考:『ニューロイメージ』
「スポーツ万能で、成績も良い」という子どもは、どの時代にもクラスに1~2名はいましたよね。彼らは脳の灰白質量が、きっと多かったのでしょう。
この発見は、世界初!とのこと。今後はお受験のために学習塾だけではなく、運動能力を高めるお稽古ごとも増えていくかもしれませんね。
体力の高さは語学能力にも影響?
また、言語処理や書籍などを読破をする上で、脳では下前頭回と上側頭回という2つの重要な部位が関与してきます。 この部位もやはり灰白質の容量が大きいほど、その能力が高いことがわかりました。 語学学習にも必要となってくるので、能力を高めておきたい部位ですね。
一方で、脳にも筋肉は存在しますが、その筋力は、脳のいずれの領域の灰白質の容量とも関係性は示さなかったようです。
灰白質とは?
「灰白質」(かいはくしつ)は効き慣れない言葉かもしれませんが、「大脳皮質」と言えば、「聞いたことがあるかも!?」と思う方も多いでしょう。
灰白質は、子どもの時にしっかりと量を増やしておかなければ、成人すると減っていきます。 高齢になってから灰白質の容量が極端に減ると、アルツハイマーや認知症など、主に記憶力が弱る病気になります。 高齢者でも頭がハッキリとしている方々は灰白質の容量が多いとも言えます。
灰白質の容量を減らさない食べ物とは?
灰白質はカラダの老化と共に減っていくので、食事から、DHAやEPA、ポリフェノール類、カテキン類、ナッツ類などの摂取を増やしておきましょう。
昔から「魚を食べる子は頭がいい」と言いますが、魚介類に含まれるDHAは実際、ヒトの脳の大脳皮質や海馬に多く存在しているので、一定量が保たれるよう、食事から保持しておくのです。
肉食中心のご家庭や、パンやお菓子をご飯代わりにしていると、お子さんの灰白質の容量は増えませんし、同じ家族内では、毎日食べるものも似ているので、パパやママの物忘れやお仕事でのミスの連発につながるかもしれません。
今はまだスペインの報告だけですが、近い将来、子どもの成長や学習能力、運動能力に関する研究は進んでいくでしょう。